テイスティングメニューの楽しみ方!コースの流れ・ペアリング・忘れられない名店
テイスティングメニューとは、シェフが小さめの料理を何皿も順番に出してくれるスタイルの食事です。皿数はふつう5~10皿で、一皿ごとにシェフが自分の腕前と料理への考え方を語っていきます。僕は長いあいだ、旅先でディナーに3時間もかかるようなレストランには行きませんでした。ストリートフードや安いビストロ派で、高級店はあえて避けていたんです。
そんな僕の考えを2021年にくつがえしたのが、ボルドーのLa Table de Montaigneでした。僕のファインダイニング巡りは、このディナーから始まったんです。今では旅に出る前に、まずどこでディナーをとるかを調べています。

テイスティングメニューの流れ
一皿の量は通常のコースより少なめです。目的はできるだけ多くの味を知ることで、3皿目でお腹いっぱいになることではありません。最初に出てくるアミューズ・ブーシュや、最後の小さなお菓子(プティフール)は、ふつう皿数に含まれません。つまり実際には、メニューに書かれた数字よりも多く食べることになります。テーブルで過ごす時間は2~4時間を見込んでおきましょう。また、ほぼすべてのレストランで、同じテーブルの全員が同じテイスティングメニューを頼む決まりになっています。そうすれば厨房は全員に同時に料理を出せますし、テーブルのみんなが同じリズムで食事を楽しめるんです。予約はほぼ必須で、人気店なら数週間前に押さえるのも珍しくありません。
ドレスコードは?たいていは誰もうるさく言いません。あの夜のボルドーで、僕は夏物のシャツに濃い色の短パンという格好で入口に立ち、そもそもこの服装で大丈夫かとおそるおそる尋ねました。するとマネージャーは「You are always dressed correctly, sir(お客様の服装はいつでも正解ですよ)」と答え、笑顔で席に案内してくれました。その夜の試験はこれだけ。しかも合格させてくれたのはスタッフのほうでした。

選べるコース、ブラインドメニュー、カルト・ブランシュ
レストランによっては、料理を選べるテイスティングメニューもあります。たとえば前菜を3種類から、メインを2種類から選ぶ、といった形です。何を味わうかを自分で決められるので、僕はこのスタイルが好きです。でも、それ以上に好きなのはサプライズ。ブラインドのテイスティングメニューでは、どんな料理が出てくるのか事前にはわかりません。シェフがその日手に入った食材をもとにコースを組み立てるからです。僕は幸い食物アレルギーがなく、ほとんど何でも食べられるので、ブラインドメニューは大好きです。アレルギーや食事制限がある人は、予約のときに伝えておきましょう。腕のいい厨房ならちゃんと対応してくれますが、前もって知っておく必要があるんです。
その究極の形がカルト・ブランシュ、いわば完全なおまかせです。La Table de Montaigneでは、アレルギーを伝えるだけで、あとは厨房がふさわしいと考えた料理を次々に出してくれます。プラハのMarie Bはさらにその上を行きます。料理が運ばれてきても何なのかわからず、自分が何を食べたのかは食べ終わってから初めて知らされるんです。僕はそこで、何時間ものあいだ食べ物のこと、そして目の前の皿のことだけを夢中で考えていたことに気づきました。イタリアのマテーラにあるDimora Ulmoでもブラインドメニューを体験しました。料理の選択はすべて女性シェフにゆだねられていました。

ペアリング - ワイン、ノンアルコール、お茶
テイスティングメニューには、ペアリングを合わせることもできます。ソムリエが一皿ごとに、料理を引き立てたり味を際立たせたりするワインを一杯ずつ選んでくれるんです。ぴったりのワインが合わさると、料理の味わいはぐっと深まります。オロモウツのEntréeでは、ソムリエの説明は詳しいのに肩ひじ張らず、心地よく聞けました。ただ、チェコ料理に合わせるなら、モラヴィアのワインがもっとあってもいいのに、と思いました。
でも最近の僕は、ノンアルコールのペアリングを選ぶことがどんどん増えています。もはや「飲めない人のための代案」ではありません。Fieldでは、ワインに引けを取らないほど本格的な選択肢になっています。プラムとカモミール、マルメロとヘーゼルナッツ、クランベリーと針葉樹の葉、といった組み合わせです。La Degustationでは、エルダーフラワーのレモネードを飲んだ瞬間、母と一緒にエルダーフラワーを摘みに出かけた子どものころに引き戻されました。ブドウのソーダは、ソーダサイフォンで炭酸水を作っていた祖父の思い出を呼び起こしてくれました。El Caminoでは一晩中お酒を飲まないつもりでいたら、スタッフがいたずらっぽくウインクして、テーブルにスパークリングティーのCopenhagen Sparkling Teaが届きました。そしてPapilioには、なんとお茶のペアリングまであります。すっきりとわかりやすい味わいで、料理にしっかり寄り添い、決して主張しすぎることがありません。

忘れられないテイスティングメニュー
僕がいちばん多くテイスティングメニューを食べてきたのは、地元チェコです。受賞歴のある店の一覧は、チェコのミシュランレストランの記事にまとめました。ヤン・クネドラのPapilioは2025年12月11日、チェコのレストランとして初めてミシュランの2つ星⭐⭐を獲得しました。そこで出会った、ニンジンに味噌とピスタチオを合わせた一皿は見事な視覚のトリックで、僕はまんまとだまされました。ディナー全体でいちばん印象に残った瞬間です。ラデク・カシュパーレクのFieldは2016年から星を守り続けています。ほとんどの料理を目の前で仕上げてくれる10皿のコースは、3時間のショーを最前列で楽しめるチケットのようなものです。La Degustation Bohême Bourgeoiseは、チェコの食材とレシピだけを使って星を獲得しています。ここの5皿のコースなら、チェコ人にも旅行者にも迷わずおすすめできます。



でも、星は必須条件ではありません。ナープラフカ河岸のそばにあるVallmoでは、カワカマスのホースラディッシュソースを食べながら、これよりおいしいものをいつ食べたか記憶をたどってみましたが、思い出せませんでした。たぶん一度もないでしょう。3年ぶり、2回目の訪問でしたが、店を出るときにはもう次の予約をしたくてたまりませんでした。プシェメク・フォレイトのEntréeでは、おそらく人生でいちばんおいしいキノコのスープを味わいました。Na Kopciは2015年から途切れることなくビブグルマンに選ばれ続けていて、El Camino tapasはテイスティングメニューを、みんなで分け合うスペイン風のごちそうとして出してくれます。


海外では、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、ポルトガルなどでテイスティングメニューを味わいました。ボルドーのLa Table de Montaigneのほかに思い出深いのが、マドリードのLa Tasqueríaです。シェフのハビ・エステベスは、内臓料理を軸にしたコースでミシュランの星を勝ち取りました。ナントではミシュラン星付きのRoza ⭐とSourcesで、アテネではミシュラン星付きのHytra ⭐で、ポルトでは女性シェフ、アンジェリカ・サルヴァドールのIn Diferenteでディナーをとりました。

それでも、僕がこれまでで最も心を揺さぶられたテイスティングメニューは、コロナ禍のころにイタリアのマテーラで訪れたDimora Ulmoのものです。店内の客はせいぜい5人ほどで、ブラインドメニューはほとんど僕たちだけのものでした。前日にミシュラン星付きのVitantonio Lombardo ⭐でディナーをとっていたので、ハードルはかなり上がっていました。それでもDimora Ulmoを超えるものはありませんでした。あの特別な時期だったからこそ、なのかもしれません。マテーラで唯一ミシュランの星を持ち、洞窟の中にひっそりと店を構えるVitantonio Lombardoは、デザートのL'ultimo Bacio(最後のキス)で僕の心をつかみました。皿の上には真っ赤な唇があるだけで、カトラリーはなし。皿から直接なめて食べるように言われ、ヘッドホンからはラブソングが流れてきました。味覚、聴覚、触覚がこれほど面白く結びついた体験は、レストランで味わったことがありません。マテーラではほかにEgoにも行き、トリノではミシュラン星付きのCondividere ⭐とScannabueも訪れました。




僕にとってテイスティングメニューは、シェフが何時間もかけて語ってくれる物語です。そして今も変わらず、旅に出る前にはまずどこでディナーをとるかを調べています。みなさんはブラインドで驚かされてみたいですか?それとも料理は自分で選びたい派ですか?