プラハのレストランField ⭐ - ラデク・カシュパーレクが2つ目の星に挑む
Fieldは、ラデク・カシュパーレク(Radek Kašpárek)のレストランです。2016年からミシュランの1つ星を掲げる、プラハのファインダイニングを代表する一軒です。名シェフの指揮のもと、モダンなチェコ料理の可能性を世界レベルにまで押し広げる皿が生まれています。
けれども、頂上ほど風当たりは強いものです。次回のミシュランガイド チェコ版に向けて、1つ星を虎視眈々と狙うレストランがいくつもあります。だからこそカシュパーレクは、守りに入るのではなく攻めに転じました。目指すはプラハ初の2つ星で、そのために「体験」に賭けています。
今のFieldでは、ほぼすべての料理がテーブルで仕上げられます。ゲスト自身が、名人たちの料理ショーの一部になるのです。

2014年、ラデク・カシュパーレクがマネージャーのミロスラフ・ノセク(Miroslav Nosek)とともにプラハのウ・ミロスルドニーフ通り(U Milosrdných)にFieldを開いたとき、多くの人が「正気か」と首をかしげました。旧市街という立地は聞こえこそ一流ですが、当時は食通がめったに足を踏み入れない通りだったのです。

10年が過ぎた今、Fieldの名を知らない人はいません。ミシュランの星を獲得したうえで、肝心なことに毎年それを守り抜いてきたチェコのレストランはわずか2軒しかありません。Fieldはそのひとつです。流行りの店の寿命がせいぜい数年ということも珍しくない美食の世界で、Fieldは揺るぎない存在なのです。


完璧な振り付け
ここ数か月でFieldが遂げている変化は、表面的なものではありません。かつてはすべてが閉ざされた厨房の扉の奥で行われ、給仕は芸術作品を運ぶ配達係にすぎませんでした。ところが今、世界のトップレストランでは、厨房と「ホール」の境界が消えつつあります。

カシュパーレクに限らず、トップシェフたちはよくわかっています。ミシュランの調査員が評価するのは味だけではありません。感動、ストーリー、そして安定感も見ているのです。だからこそ今のFieldでは、食材やソース、付け合わせを載せたワゴンが、スイス時計のような精密さで店内を行き交います。スタッフはゲストの目の前でプレーティングを仕上げ、エマルジョンを混ぜ、肉をフランベします。

見せるためだけの演出ではありません。この方法なら、料理は最高の温度と状態でゲストのもとに届きます。ソースを厨房でかけると、運ぶ途中でつやや温度が失われかねません。だからソースが皿に注がれるのは、最初のひと口のほんの数秒前なのです。リスクの高い勝負です。どんなミスも丸見えで、隠れる場所はありません。
けれども、まさにこのリスクこそが、1つ星と2つ星を分けるのかもしれません。

畑からの食材
Fieldの哲学は、今もその名前に忠実です。テーマは変わらず「フィールド」、つまり畑や野原です。追い求めているのは素材の生々しさ、ブルータリズム、そして原点回帰です。ただしその仕上がりは、田舎料理というより、むしろ外科手術を思わせます。その好例が「鴨、プラム、黒ニンニク、バーベナ」というひと皿です。
テーブルに運ばれてくるのは、アートと挑発のはざまを行くビジュアル作品です。苔のクッションの上に横たわるのは、鴨の頭と脚をかたどったオブジェ。食材がどこから来たのかを生々しく突きつけてきます。その横には、グーズベリーのジェルと鴨の生ハムを添えた、なめらかな鴨のパテのボンボンが並びます。

隣の皿では、カシュパーレクとそのチームが、たまり醤油のグレーズをまとわせて直火で焼いた鴨のハツを出してくれます。家庭のスープでおなじみの、あのかたい食感のことは忘れてください。緻密な調理のおかげで、ハツは驚くほどやわらかく、チェコ人が内臓に抱く固定観念を打ち砕いてくれます。

秋のメニューのなかでも、間違いなくきわどいところを攻めるひと皿になるでしょう。石膏のオブジェはあまりにリアルで、下ごしらえ前の丸ごとの鴨を見たことのないゲストの多くは、本物の骨格だと勘違いするかもしれません。くちばしは芸術的な表現として骨のように作られていますが、これは解剖学的には正確ではありません。それをヒントに作り物だと気づけるのは、ごく一部の人だけでしょう。
食材そのものも、同じく妥協がありません。ハツ特有の食感は、人によっては意外すぎるかもしれません。同じテーブルでも、好みがはっきり分かれる料理です。僕は大満足でしたが、同行者はテイスティングメニューのなかでこの皿だけを残しました。とはいえ、Fieldが狙っていたのはまさにこうした賛否両論だったのだろうと思います。

ゲストの前で料理を仕上げるということは、スタッフへの要求が何倍にも高まるということです。Fieldの給仕は、もはや皿を運んで説明するだけの存在ではいられません。ある程度は料理人でもなければならないのです。そして、サービスの最終段階に臨むスタッフの集中力は、本当に驚くべきものです。




2つ星へ
なぜそこまでするのでしょうか。ラデク・カシュパーレクは、現状維持に甘んじるタイプではありません。チェコという小さな世界でも、ここ数年で競争が一気に激しくなっています。


ミシュランの2つ目の星を獲るということは、あの有名なガイドの言葉を借りれば、そのレストランが、ふらりと立ち寄る店ではなく「遠回りしてでも訪れる価値がある」店だと認められるということです。それはプラハを次のステージへ押し上げることでもあります。その野心は、ウ・ミロスルドニーフ通りにある一軒のレストランの枠を超えています。僕はそこがたまらなく好きです。もしFieldが2つ星を獲得すれば、チェコの食文化全体の格が上がるはずです。とはいえ、それはリスクでもあります。


グラスの錬金術
ただ、2つ目の星への道は皿の上だけにあるわけではありません。ここまで突き詰めた美食の世界では、グラスの中身も料理と対等なパートナーでなければなりません。トップレストランは、もうお酒だけが主役ではない時代に合わせて変わりつつあります。

僕がじっくり味わったノンアルコールのペアリングには、たとえばプラムとカモミール、マルメロとヘーゼルナッツ、サワーチェリーとレモンタイム、コケモモと針葉樹の葉といった組み合わせがありました。
Fieldの場合、これはワインに代わる、ほぼ遜色のない選択肢です。「ほぼ」と書かざるを得ないのは、ワインペアリング「B」も味わう機会があったからです。Fieldのワインペアリングは、それほど完璧なのです。


Fieldのソムリエは、それぞれのブドウ品種と産地のお手本といえるワインを選びました。ヨハン・ルックのシルヴァーナーや、オーストリアのワイナリー、クノルのリースリングは、それぞれの品種のあるべき姿そのものでした。フレッシュでミネラル感があり、品種の個性がはっきりしています。


そのためFieldでは、ベーシックなワインペアリングでも、由緒と気品を備えたワインが料理に合わせて出されます。ドロワン(Droin)のシャブリ、フランスのワイナリー、コス・デストゥルネルの「Pagodes de Cos」、ジャクソン(Jacqueson)のクレマン・ド・ブルゴーニュを飲めば、ここでは何ひとつ偶然に任されていないことがよくわかります。
Fieldの料金
メニューを見れば、Fieldがトップリーグを目指していることは誰の目にも明らかです。10皿のテイスティングメニューは4,600コルナ(約35,500円)で、ベジタリアン版はそれより300コルナ(約2,300円)安くなります。最上級のワインペアリング(ペアリングA)を選ぶなら、さらに6,800コルナ(約52,500円)かかります。見事に組み立てられたワインペアリングBは2,450コルナ(約19,000円)、手の込んだノンアルコールのペアリングは1,350コルナ(約10,500円)です。

Fieldでゲストが支払うのは、最高級の食材の代金だけではありません。先に触れた「振り付け」にもお金を払うのです。サービスの舞台を厨房からテーブルへ移すには、より多くのスタッフが必要なだけでなく、何よりも高い技術とトレーニングを積んだスタッフが欠かせません。支払っているのは、何十時間にも及ぶ準備の対価でもあります。Fieldが売っているのは「料理」ではありません。3時間の舞台を最前列で観るためのチケットなのです。
それで2つ目の星に届くのかどうかは、2025年12月11日、マリアーンスケー・ラーズニェで開かれるミシュランの授賞式で明らかになります。
Fieldを心から応援しています。
Field