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プラハのレストランLa Degustation Bohême Bourgeoise ⭐ - ミシュランの星に輝くチェコ料理へのオマージュ

ダン・シュパニヘル チェコ 更新日 コメントはまだありません

オロモウツのトヴァルーシュキ(香りの強い熟成チーズ)、ビーツ、牛肉、マス、ナマズ、鯉、キャベツ、ケシの実、プラムジャム、西洋わさび。どれもチェコ料理の土台となる、個性の強い食材です。それがレストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseでは、まったく新しい姿に生まれ変わります。

La Degustation Bohême Bourgeoiseは、チェコ料理は重くも退屈でもないことを証明してくれる店です。クリエイティブなチームが送り出すのは、驚きがあって、味の調和に心が躍り、見た目にも惹きつけられる料理ばかりです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、牛肉のタルタル。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、牛肉のタルタル。

La Degustation Bohême Bourgeoiseは今でも、チェコの食材とレシピだけで組み立てた料理でミシュランの星を獲得し、守り続けているチェコ唯一の店です。

ところが、この画期的なプロジェクトは、誰かに気づいてもらう前に危うく幕を閉じるところでした。

流れを変えた挑戦

2006年にLa Degustation Bohême Bourgeoiseが開店したとき、ここからチェコ料理の新しい章が始まるとは、ほとんど誰も思っていませんでした。チェコの料理といえば重たいもの、という評判が根強かった時代で、かなり危険な賭けだったのです。

アンビエンテ・グループ(Ambiente)のオーナー、トマーシュ・カルピーシェク(Tomáš Karpíšek)とシェフのオルドジフ・サハイダーク(Oldřich Sahajdák)が描いたビジョンは大胆なものでした。チェコ料理の原点に立ち返りながら、世界のトップレベルの技術と精度でそれを生まれ変わらせること。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、チェコの甘酸っぱいトマトソース。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、チェコの甘酸っぱいトマトソース。

とはいえ、始まりは順調ではありませんでした。最初の数か月は空席が目立ち、こんなチェコ料理を求める人がそもそもいるのか、という疑問がつきまといました。それでも親会社アンビエンテの支えがあったおかげで、La Degustation Bohême Bourgeoiseは生き延び、目先の利益ではなく長期的なビジョンに集中することができたのです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、ビーツとトヴァルーシュキ。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、ビーツとトヴァルーシュキ。

転機は、初めての国際的な評価とともに訪れました。海外からの客やメディアが、この店の個性的な味と一流の技術に注目しはじめたのです。そして名誉あるミシュランの星を手にし、La Degustation Bohême Bourgeoiseは2012年から毎年その星を守り続けています。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、鯉と西洋わさび。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのアミューズ・ブーシュ、鯉と西洋わさび。

多くの食通にとって、La Degustation Bohême Bourgeoiseはなかなか手の届かない憧れの店です。そして僕にとっても、特別な思い出のある店です。

学生時代を終えたばかりのころから、僕はずっとこの店に行きたいと思っていました。せめてレストランフェスティバル「Grand Restaurant Festival」の期間中に、と。でも一度も予約が取れたことはありませんでした。席は毎年あっという間に埋まってしまったのです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - サラダビーツ、キュウリ、ケシの実。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - サラダビーツ、キュウリ、ケシの実。

この店にまつわるもうひとつの強い記憶は、コロナ禍のころのものです。世界的なパンデミックは飲食業界をかつてない勢いで直撃しました。レストランは一夜にして客を失い、プラハの歴史地区からは人影が消え、にぎわいと途切れない客の流れに慣れていた店々は、突然生き残りそのものをかけて戦うことになったのです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - マス、ディル、サワークリーム。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - マス、ディル、サワークリーム。

La Degustation Bohême Bourgeoiseは、いかにもチェコらしい機転でこの危機に立ち向かいました。美しい器と完璧なサービスの代わりに登場したのは、チェコのたいていの家庭にある、ステンレス製の段重ねの弁当箱でした。

料理人たちがその弁当箱に料理を詰め、客はそれを家に持ち帰るという仕組みです。そうすることで苦しい時期のレストランを応援することもできたのです。トップクラスのガストロノミーが、どれほど厳しい状況にも柔軟に適応できる姿を目の当たりにして、僕は心を揺さぶられました。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - ナマズ、キャベツ、ラムソン。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - ナマズ、キャベツ、ラムソン。

引き算の美学

La Degustation Bohême Bourgeoiseは、とにかく我が道を行く店です。メニューの構成からして、チェコでは珍しいものです。あるのはテイスティングメニューひとつだけで、その内容は季節や食材の入り具合、チームのそのときのひらめきによって変わります。ランチメニューすらありません。

どの皿も、味だけでなく見た目や技術の面でも、細部まで考え抜かれ、磨き上げられています。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - 牛肉、ズノイモ風ソース、新玉ねぎ。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - 牛肉、ズノイモ風ソース、新玉ねぎ。

すべての基本は食材です。料理チームは小規模な農家や漁師、野山で食材を採る人など、鮮度を保証してくれる地元の生産者と手を組んでいます。だから厨房に届くのは、チェコの小川で獲れたマス、プラハ近郊の畑の野菜、国内の森のキノコです。食材は季節ごとに入れ替わります。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - プラム、クリーム、スリヴォヴィッツ。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - プラム、クリーム、スリヴォヴィッツ。

テイスティングメニューの前に出てくるアミューズ・ブーシュから、もう驚かされます。トヴァルーシュキの繊細でありながら力強い味わいは、多くの外国人客にとっておそらく人生で初めての体験で、一瞬でこの食事への期待値を引き上げてくれます。

西洋わさびを添えた鯉も、開店当初からメニューに載っている牛肉のタルタルも絶品です。

チェコの定番、甘酸っぱいトマトソースを「舐めるひと皿」に仕立て、客が小皿から直接舌でぺろりと舐め取るという趣向は、遊び心と大胆さにあふれていて、少なくとも僕の記憶にはずっと残りそうです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのプティフール、温泉ウエハースとマシュマロ。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのプティフール、温泉ウエハースとマシュマロ。

アミューズ・ブーシュのあとに運ばれてくるのは黄色いビーツです。一見すると少し地味な展開に思えるかもしれません。チェコではビーツが長いあいだ、ハレの日の食卓にふさわしい食材というより家畜の飼料と見なされてきたことを思えば、なおさらです。それがここでは、エレガントに仕立てられています。ヨーグルトとケシの実のオイルを合わせることで、見過ごされがちな野菜でも主役として輝けることを示しているのです。

マスの皿では、チェコでもっとも存在感のあるハーブのひとつ、ディルが主役になります。「同じ」ディルソースが3種類、それぞれ違う強さと個性で添えられています。

鴨の脂でじっくり火を入れたナマズが横たわるのは、チェコ料理に欠かせないもうひとつの食材、キャベツの上です。

ズノイモ風ソース(ピクルス入りのソース)を合わせた牛肉は、ここでは牛タンと豚バラのデュエットに仕立てられていて、またもや高度な調理技術に感心させられます。肉はミリ単位の薄さにスライスされ、そのおかげで驚くほど繊細な食感と、重なり合う味の層の深い一体感が生まれています。文句なしの完成度です。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのプティフール、ストーンフルーツのホイップクリームを添えたクグロフ。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのプティフール、ストーンフルーツのホイップクリームを添えたクグロフ。

デザートのパートも、それまでの皿と同じくらい考え抜かれています。運ばれてくるのは、なめらかなプラムジャムの一皿で、そこにモラヴィアの国民的な蒸留酒、スリヴォヴィッツ(プラムブランデー)の風味が上品に溶け込んでいます。軽やかなクリームのエスプーマには、チェコ人なら誰もが子どものころから知っている伝説的なS字形のビスケットを砕いたクランブルが添えられています。

締めくくりにテーブルに置かれるのは、完璧な左右対称のヘーゼルナッツクリームを挟んだ温泉ウエハースです。チェコのあらゆる温泉町のシンボルですね。しっとりとしたクグロフのひと切れも欠かせません。チェコの日曜日の食卓に必ず並ぶ、もうひとつの定番です。森のベリーのマシュマロはチェコらしさを少し崩していますが、サーブするときのちょっとしたショーは楽しいものです。

ワインか、サワーチェリーか

La Degustation Bohême Bourgeoiseのワインペアリングとノンアルコールのペアリングは、特筆に値します。厳選されたワインはもちろんですが、何よりノンアルコールのペアリングが、それだけでひとつの体験になっているのです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのノンアルコールのペアリング、サワーチェリー。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのノンアルコールのペアリング、サワーチェリー。

ノンアルコールのペアリングでは、どの皿にも、ひとつの際立った素材を軸にした一杯が添えられます。どれもチェコの家庭の伝統をはっきりと感じさせるものです。

エルダーフラワーのレモネードは、一瞬で僕を子ども時代に連れ戻してくれます。僕にとっては夏の象徴でした。母と一緒にエルダーフラワーの花を摘みに行き、自家製レモネードができあがるのを二人で心待ちにしたものです。La Degustation Bohême Bourgeoiseのエルダーフラワーのレモネードは繊細で、見事にバランスがとれていて、正直に言えば何本か家に持ち帰りたいくらいでした。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのノンアルコールのペアリング、ルバーブ。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのノンアルコールのペアリング、ルバーブ。

トマトとバジルはチェコのほとんどの家庭菜園で育っていますが、ドリンクになると、チェコというよりむしろ凝縮されたイタリアの味です。けれども次のボトル、ノンアルコールのルバーブで、味わいはしっかりとチェコの路線に戻ってきます。

サワーチェリーは、何口か飲み進めてようやく良さがわかる一杯ですが、その価値は十分にあります。牛肉には、赤ワインよりもこちらのほうが合うと感じたほどです。最後に出てくるのはブドウのソーダで、ソーダサイフォンのボトルと自家製ラズベリーシロップを用意してくれた祖父の記憶が、すぐによみがえってきました。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのノンアルコールのペアリング、ブドウのソーダ。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのノンアルコールのペアリング、ブドウのソーダ。

つまりLa Degustation Bohême Bourgeoiseでは、ノンアルコールのペアリングがワインと対等なパートナーなのです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのワインペアリング、トロヤーク・ワイナリー(Komorní vinařství Troják)の「Žernosecký řezlík」(2023年)。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのワインペアリング、トロヤーク・ワイナリー(Komorní vinařství Troják)の「Žernosecký řezlík」(2023年)。

ワインペアリング「ワインの冒険」では、ボグダン・トロヤーク(Bogdan Troják)、ミラン・ネスタレツ(Milan Nestarec)、オタ・シェフチーク(Ota Ševčík)といった、実力の確かなモラヴィアの造り手たちのワインが楽しめます。なかでもひときわ異彩を放っていたのが、デザート用のアイスシードル「Utopia Patience」です。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのワインペアリング、デザート用のアイスシードル「Utopia Patience」(2022年)。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseのワインペアリング、デザート用のアイスシードル「Utopia Patience」(2022年)。

どこを見ても意味がある

La Degustation Bohême Bourgeoiseでの美食体験は、皿の上だけでは終わりません。店ならではの雰囲気を完成させているのは、デザインスタジオのオルゴイ・ホルホイ(Olgoj Chorchoj)が手がけた空間です。細部へのこだわりと、シンボルを巧みに使いこなす手腕で知られるスタジオです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - 存在感のあるシャンデリアが目を引くシンプルな店内。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - 存在感のあるシャンデリアが目を引くシンプルな店内。

空間でもっとも目を引くシンボルは、「Consommé」と名づけられた2基の円形のクリスタルシャンデリアです。吊り下げられたガラスのパーツは動物の骨を表しています。骨はていねいに取るブイヨンの土台であり、そのブイヨンこそがチェコ料理全体の土台なのです。テーブルの天板には木の年輪が浮かび、椅子にはチェコ原産の牛「チェストル」種の革が張られています。

音響は味わいへの集中を何ものにも邪魔されないよう設計され、内装はあえて伝統的なラグジュアリーを避けています。華やかさの代わりにここを支配しているのは、「アンチ・ラグジュアリー」の考え方です。ミニマリズム、機能性、そして体験の本質を大切にする姿勢です。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - オープンキッチン。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - オープンキッチン。

床や窓、印刷されたメニューに繰り返し現れる六角形のモチーフも偶然ではありません。味を感じ取るための基本単位である味蕾を表しているのです。六角形の模様は控えめに、けれど徹底して店内に行き渡っています。それはこのレストラン全体の哲学そのものです。すべてに意味があり、すべてが細部まで考え抜かれているのです。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - この店のためだけに作られた本。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoise - この店のためだけに作られた本。

お会計をお願いします

La Degustation Bohême Bourgeoiseでの食事は決して安くはありません。けれどもここには、ほかのどの店にも増して、数皿のコース料理をはるかに超える体験が待っています。

いくつものアミューズ・ブーシュと締めのプティフールがつく5皿のテイスティングメニューは3,500コルナ(約27,000円)です。ワインペアリングは2,000コルナ(約15,500円)と3,700コルナ(約28,500円)の2種類から選べ、ノンアルコールのペアリングは1,300コルナ(約10,000円)です。

レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseの入口。
レストランLa Degustation Bohême Bourgeoiseの入口。

チェコの国民食を食べ尽くしたチェコ人に、La Degustation Bohême Bourgeoiseをすすめるか?もちろんです。旅行者にすすめるか?迷わずすすめます。チェコの大地が育んだ最高のものを味わえるのですから。

チェコ料理は、その個性と遊び心を失うことなく、世界レベルに到達できるのです。

La Degustation Bohême Bourgeoiseが、それを証明しています。

ぜひ味わってみてください!

La Degustation Bohême Bourgeoise

ウェブサイト

ダン・シュパニヘル

ダン・シュパニヘル

僕はダン。屋台の一皿からミシュランの星まで、自分の舌で確かめたものだけを書いています。おいしいもののために世界の半分を旅して、ありとあらゆるものを - ときには、とんでもないものまで - 試してきました。

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