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ヴィソキー・ウーイエズドのRestaurant Papilio ⭐⭐ - ヤン・クネドラが極める完璧な一皿

ダン・シュパニヘル チェコ 更新日 コメントはまだありません

チェコでも屈指の野心的なレストランを探すなら、目指すべきはプラハの中心部ではなく、目立たない場所にあるヴィソキー・ウーイエズドです。その地にあるRestaurant Papilioで厨房を率いているのが、ミシュランの伝説的シェフたちのもとで厳しい修業を積んできたヤン・クネドラ(Jan Knedla)です。

チェコのミシュランガイド2026年版の発表まで1週間を切ったころ、Restaurant Papilioに足を踏み入れた僕がまず気づいたのは、その静けさでした。

まさに嵐の前の静けさです。星が発表されれば、きっと嵐が巻き起こるでしょう。ヤン・クネドラの名はチェコのフーディーたちのあいだでますます大きく響くようになっていますが、本人はテレビに出てくるショーマンというより、物静かで集中力の高い内向的な人という印象です。

Restaurant Papilioのカナッペ - ザンダー、スイバ、キャビア。
Restaurant Papilioのカナッペ - ザンダー、スイバ、キャビア。

クネドラは現代のシェフの典型です。その歩みは偶然の幸運の物語ではなく、ひたむきな努力と、海外で計画的に積み上げたキャリア、そしてチェコへの帰国の物語です。

いまPapilioで何が起きているのかを理解するには、クネドラのパスポートをのぞいてみる必要があります。その経歴は、本気で料理の道を志す若い料理人にとって旅程表になりそうなほどです。大事なのは海外で働いたことそのものではありません。どこで、誰と働いたかです。

Restaurant Papilioのカナッペ - 牛肉、ラビッジ、ふすま。
Restaurant Papilioのカナッペ - 牛肉、ラビッジ、ふすま。

美食の頂点への道はグラスゴーで始まりましたが、本当の転機が訪れたのは母国でした。プラハのAllegro(当時⭐)で、アンドレア・アッコルディ(Andrea Accordi)に師事したヤン・クネドラは、初めてミシュランの星の世界に触れ、ファインダイニングが単なる仕事ではなく、生涯をかけて打ち込むものになると悟ったのです。そこから世界の美食の最高峰で過ごす10年が始まり、いまの彼の作風が形づくられました。

イタリアのRossellinis ⭐⭐では、ピーノ・ラヴァッラ(Pino Lavarra)のもとで軽やかさの感覚と、季節への徹底した敬意を身につけました。ロンドンのL'Atelier de Joël Robuchon ⭐⭐では、世界でも指折りの厳しさで知られるフランス流の精密さと技術的規律を叩き込まれます。ロシアのサンクトペテルブルクでは、師アッコルディとともに高級レストランPercorsoを開業しました。

Restaurant Papilioのカナッペ - トリュフに見立てた一品。
Restaurant Papilioのカナッペ - トリュフに見立てた一品。

とはいえ、料理人としてのDNAに最後の材料を加えたのはアジアでした。世界屈指のレストランである香港のAmber ⭐⭐で、リチャード・エッケバス(Richard Ekkebus)の右腕として働いたのです。彼が美意識と料理の奥深さを磨き上げたのは、まさにこの店でした。

こうしてヤン・クネドラは、フランスの技術という骨格に、イタリアの軽やかさとアジアの洗練、そしてチェコらしい創意を重ね合わせています。

Restaurant Papilio - ニンジン、味噌、ピスタチオ、エストラゴン。
Restaurant Papilio - ニンジン、味噌、ピスタチオ、エストラゴン。

食材へのこだわりは、いい意味で執念と言えるほどです。業務用の卸から仕入れるシェフもいるなか、クネドラは自分の基準に応えてくれる地元の生産者を探すことに時間を費やしています。周辺の森のジビエ、地元農家の野菜、決まった養魚池の魚といった具合です。

アジアでの経験を生かし、クネドラは第五の基本味であるうま味を見事に操ります。味噌や麹を使うことをためらいませんが、その使い方があまりに巧みなので、客はたいてい気づきません。ただ料理に驚くほどの奥行きがあると感じるだけです。

Restaurant Papilio - 卵黄、アンズタケ、パティソン、ハーブ。
Restaurant Papilio - 卵黄、アンズタケ、パティソン、ハーブ。

チームの率い方も一味違います。「ヘルズ・キッチン」やマスターシェフといったテレビ番組が見せる、怒鳴り散らすシェフのイメージは忘れてください。

Papilioでクネドラが貫いているのは、静かな威厳のスタイルです。厨房の仕事ぶりを眺めていると、言葉を交わさずに完璧に息の合った動きに、ときに背筋がぞくっとするほどです。厨房はまるで精密機械のように滑らかに動き、クネドラは自ら手本を示すことで、チームが自分たちの力で完璧を目指せるよう導いています。

Restaurant Papilio - ザンダー、フェンネル、ザリガニ、エスカルゴ。
Restaurant Papilio - ザンダー、フェンネル、ザリガニ、エスカルゴ。

Papilioの現在のメニューは、食材に関して言えば、妥協のない贅沢そのものです。クネドラが出すのは、いま手に入るなかで最高の食材ばかり。キャビアからザリガニ、白トリュフまでそろっています。華やかさをためらわない料理ですが、クネドラはそれを謙虚さと技術的な精密さをもって供します。

Restaurant Papilio - ホロホロ鳥、黄色いビーツ、トウモロコシ、サヤインゲン。
Restaurant Papilio - ホロホロ鳥、黄色いビーツ、トウモロコシ、サヤインゲン。

テイスティングは3種のカナッペから始まり、キャビアをのせたザンダー、和牛、そしてトリュフに見立てた一品が並びます。この時点ですでに味は天にも昇るほどの高みに達していて、しかもこのレベルが最後まで続くのです。

Restaurant Papilio - ラビオリ、白トリュフ、チーズ、栗。
Restaurant Papilio - ラビオリ、白トリュフ、チーズ、栗。

僕にとってディナー全体でいちばん印象に残ったのは、味噌とピスタチオ、エストラゴンを合わせたニンジンでした。味だけでなく、目でも楽しませる遊び心があるのです。目の前の皿にあるのは、本物そっくりに再現されたオレンジ色の根菜。実はこの野菜のさまざまな食感と形を組み合わせてできています。上の部分は文字どおり厚さ1ミリの薄切りを精密に重ね、最終的なシルエットに仕上げています。

ありふれた食材でもシェフの腕次第で忘れられない作品になることを示す、お手本のような一皿です。

Restaurant Papilio - 仔羊、ナス、トマト、パプリカ。
Restaurant Papilio - 仔羊、ナス、トマト、パプリカ。

続いて、アンズタケとパティソンを添えた卵黄や、フェンネル、ザリガニ、エスカルゴを合わせた丁寧な仕事のザンダーが登場します。麹で熟成させたホロホロ鳥は厨房の技術力を物語り、チーズを詰めて白トリュフをたっぷり削りかけたラビオリは羽のように軽やか。肉料理の締めくくりはナスとパプリカを添えた仔羊で、その力強く深い味わいにすっかり心をつかまれました。

チーズの盛り合わせもよく考えられていて、味わいが少しずつ力強さを増していく構成です。黒トリュフを合わせたまろやかなブリーに始まり、山羊乳のルブロションを経て、アルプスの定番グリュイエールへ。プロヴァンスのハーブで熟成させた羊乳チーズで強さが増し、最後はロックフォールで最高潮を迎えます。チーズには無漂白のドライアプリコットがよく合います。

Restaurant Papilioのチーズの盛り合わせ。
Restaurant Papilioのチーズの盛り合わせ。

デザートのパートに重たいスイーツを期待してはいけません。待っているのは、むしろ洗練された味の遊びです。アニス、フェンネル、ショウガを合わせたシーバックソーンが口の中をすっきりさせ、アーモンド、クワルク(フレッシュチーズ)、レモンバームを添えたアプリコットは、チェコの夏の記憶を呼び起こしてくれます。クネドラ自身も、この一皿で祖母を思い出すのだそうです。

Restaurant Papilio - アプリコット、アーモンド、クワルク、レモンバーム。
Restaurant Papilio - アプリコット、アーモンド、クワルク、レモンバーム。

Papilioは特別な日のためのレストランです。基本の6品コースは3,500コルナ(約27,000円)。ただ、多くの客は8品コースの4,500コルナ(約34,500円)か、フルの10品テイスティングの5,500コルナ(約42,500円)を選ぶそうです。なお、Papilioでは最初の「アミューズ・ブーシュ」と最後の「プティフール」を品数に含めていません。これは伝えておきたいポイントです。

もちろんペアリングも体験の一部です。ソムリエが用意しているのは2種類のワインペアリングで、ベーシックな「Privia」(コースの品数により2,000~3,200コルナ/約15,500~24,500円)と、希少なヴィンテージも含む特別な「Pavonia」(3,500~5,900コルナ/約27,000~45,500円)です。お酒を飲まない人にはお茶のペアリング(1,300~1,900コルナ/約10,000~14,500円)があり、僕が味わったのはこちらでした。

お茶はあらかじめ淹れて分量をきちんと量り、冷やした状態で出てきます。日本の番茶、南米のマテ茶、インドのマサラチャイなどがそろっています。狙いはお茶の通を希少な年代物の茶葉で驚かせることではなく、クリアでわかりやすい味わいを届けること。料理に寄り添い、邪魔をしない、頼れる名脇役です。

Restaurant Papilioのお茶のペアリング。
Restaurant Papilioのお茶のペアリング。

チェコで初めて行われたゴ・エ・ミヨ(Gault&Millau)の評価(2025年)で、Papilioは一気にチェコの美食シーンの頂点に躍り出ました。最高数のトック(コック帽)を獲得したのはPapilioただ1軒。これにより、ランキングでチェコ最高のレストランの座を確かなものにしました。ヤン・クネドラ自身も、ゴ・エ・ミヨから「シェフ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれています。

ヤン・クネドラとPapilioを次に待っているものは何でしょうか。シェフ本人は控えめに語りますが、その野心はひしひしと伝わってきます。Papilioは、新しく始まるチェコのミシュランガイドでも高い評価を狙えるだけの条件をすべて備えています。その発表は、いよいよ明日です。クネドラの料理は、ヨーロッパのトップレストランと比べても引けを取りません。

残る疑問はおそらく、2つ星を今年いきなり獲得するのか、それとも来年に向けてクネドラとチームが一歩ずつ積み上げていくのか、という点だけでしょう。

なにしろPapilioには、⭐⭐にふさわしい最高の条件がそろっているのですから。

2025年12月11日追記。ヤン・クネドラ率いるPapilioが、チェコのレストランとして初めてミシュランの2つ星を獲得しました!

Restaurant Papilio

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ダン・シュパニヘル

ダン・シュパニヘル

僕はダン。屋台の一皿からミシュランの星まで、自分の舌で確かめたものだけを書いています。おいしいもののために世界の半分を旅して、ありとあらゆるものを - ときには、とんでもないものまで - 試してきました。

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