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プラハのレストランVallmo - 破格のお値段で楽しむ絶品テイスティングメニュー

ダン・シュパニヘル チェコ 更新日 コメントはまだありません

派手さを売りにしているわけでもなく、観光客でにぎわう大通り沿いにあるわけでもありません。それでもプラハのレストランVallmoは、グルメのあいだでもっと話題になっていいお店です。シェフのダン・クカチカ(Dan Kukačka)は、チェコ料理もモダンで軽やかに、そして世界に通用するものになりうることを、ここで証明しています。

レストランVallmo。ケシのモチーフが店内のあちこちに見られます。
レストランVallmo。ケシのモチーフが店内のあちこちに見られます。

店名のVallmoは、スウェーデン語で「ケシ」という意味です。この名前は、お店の哲学を比喩的にもよく表しています。チェコの伝統に深く根ざしながら、デザインや盛り付けには北欧らしい新鮮で澄んだアプローチを取り入れているのです。ケシはコンセプト全体を貫いていて、ナプキンやサービングボードに描かれたケシ坊主のデザインから、看板料理にまで登場します。

前回の訪問から3年以上がたち、そのあいだにVallmoではいろいろなことがありました。いちばん大きな変化は、厨房のバトンが渡されたことです。創業者でお店の顔だったマルティン・マコヴィチカ(Martin Makovička)はオーナーの立場に移り、Vallmoとトシェボニ(Třeboň)での新しいプロジェクトの両方に力を注いでいます。そして2年以上前から厨房を率いているのが、ダン・クカチカです。

クカチカは、この業界の新人ではありません。伝説的なレストランAlcronで、ロマン・パウルス(Roman Paulus)のもと料理人として育った実力派世代のひとりです。パヴェル・ビーチェク(Pavel Býček)やマロシュ・ヤンボル(Maroš Jambor)といった面々と肩を並べて、ここで腕を磨きました。

レストランVallmoのアミューズ・ブーシュ「スナックバー」。
レストランVallmoのアミューズ・ブーシュ「スナックバー」。

クカチカはミシュランレストランでの修業を経てきましたが、Vallmoで目指しているのは洗練されたシンプルさです。その作風は明快で、自信に満ちています。完璧に火を入れた肉や魚、季節の野菜、力強いソース、そしてハーブ。

そのスタイルは、最初の一皿から表れています。幕開けを飾るのは、「スナックバー」風の遊び心あるアミューズ・ブーシュの3品です。どれも技術的に精密で、味がぎゅっと凝縮されています。小さなグラスで出される温かいカボチャのスープが、この組み合わせを締めくくります。

それより先にテーブルに届くのがパンです。Vallmoでは、中身がずっしり詰まって皮がパリッとした温かい丸パンを出しています。添えられるのは風味づけしたホイップチーズ。前回訪れたときと同じように、どこか懐かしいプロセスチーズの味わいがします。ただし、考えうる限りいちばん贅沢な形で。

レストランVallmo。パンとホイップチーズ。
レストランVallmo。パンとホイップチーズ。

洗練の流れは、ビーツの一皿にも続きます。根菜の土っぽさをスモークしたマスカルポーネがやわらげ、ローリエの香りが料理に一段と奥行きを与えています。

レストランVallmo。ビーツ、スモークしたマスカルポーネ、ローリエ。
レストランVallmo。ビーツ、スモークしたマスカルポーネ、ローリエ。

次のタルトレットさえなければ、僕のVallmoレポートはただ完璧さを讃えるだけのものになっていたでしょう。残念ながら生地が厚くて硬すぎ、ナイフとフォークではほとんど切れませんでした。手で持って食べてみても、かじった瞬間にたっぷりの具がはみ出してこぼれてしまいます。とても惜しいと思いました。というのも、ほぐした鴨肉そのものは、メロン、マルメロ、細切りのフライドポテトと見事に調和していたからです。

レストランVallmo。タルトレット、鴨のもも肉、マルメロ、じゃがいも、メロン。
レストランVallmo。タルトレット、鴨のもも肉、マルメロ、じゃがいも、メロン。

それでもVallmoは、続く一皿ですぐに完璧さを取り戻します。タルタルステーキです。牛肉に、存在感のあるマジョラムが合わせてあります。高級料理では珍しい組み合わせですが、これが見事にはまっています。アカハツと一緒になって土と森を感じさせる味わいを生み、一瞬でチェコの田園風景へと連れていってくれます。

レストランVallmo。牛肉のタルタルステーキ、マジョラム、アカハツ。
レストランVallmo。牛肉のタルタルステーキ、マジョラム、アカハツ。

次の一皿は、この夜いちばん見た目の美しい料理で、肉がなくても成り立つことの証明でもありました。

キクイモは、薄切りを何層にも重ねる「ポム・アンナ」の技法で仕上げられています。そこにパリッとしたケールとホエイのソースが添えられ、しっかりと存在感を放っています。

軽やかでエレガント、味わいに幾重もの層がある一皿で、プラハのナープラフカ河岸に近い路地裏の目立たないレストランというより、パリの一流店で出てきてもおかしくない料理です。

レストランVallmo。キクイモのアンナ風、ホエイ、ポテトストロー、ケール。
レストランVallmo。キクイモのアンナ風、ホエイ、ポテトストロー、ケール。

南ボヘミアのルーツへの回帰をはっきり示したのが、僕にとってこのテイスティングの最高潮となった一皿です。身の締まった肉食魚のカワカマスは、皮がパリッと焼かれ、非の打ちどころのない仕上がりでした。でも主役はそのまわりにあります。西洋わさびのソースのバランスが完璧なのです。しっかり辛みがあるのに、繊細な魚の味を消しません。酸味のあるカラントと甘いカボチャが加わり、コントラストの妙のお手本のような一皿になっています。

これよりおいしい西洋わさびのソースをレストランで食べたのはいつだったか、記憶をたどっても思い出せません。たぶん一度もないと思います。

レストランVallmo。カワカマス、西洋わさび、スイスチャード、カボチャ、カラント。
レストランVallmo。カワカマス、西洋わさび、スイスチャード、カボチャ、カラント。

続く鴨は干し草の上で12日間熟成させてあり、その熟成が肉にやわらかさと凝縮した旨みを与えています。付け合わせには、生のじゃがいもとゆでたじゃがいもを合わせて作る、南ボヘミア伝統のクネドリーキ「ドルバーク」が欠かせません。さらに白キャベツとニンジン、力強いソースが添えられます。

レストランの鴨胸肉は退屈な料理だと思うことが多い僕ですが、ここのは心がほっと温まる一皿で、シンプルさと上質な素材こそがいちばんの強みだと思い出させてくれます。

レストランVallmo。熟成鴨、白キャベツ、ニンジン、じゃがいものクネドリーキ、キャラウェイ。
レストランVallmo。熟成鴨、白キャベツ、ニンジン、じゃがいものクネドリーキ、キャラウェイ。

デザートへの橋渡しをするのは、旬の素材を巧みに使ったプレデザートです。ここではカボチャに、コーヒーとふわふわのマシュマロを合わせています。コーヒーのほろ苦さがカボチャの甘さを抑える大胆な組み合わせです。メインのデザートの前に口の中をすっきりさせてくれる完璧な一皿で、僕がこれまで出会ったカボチャのスイーツのなかでも、もしかするといちばんかもしれません。

レストランVallmoのプレデザート。カボチャ、コーヒー、マシュマロ。
レストランVallmoのプレデザート。カボチャ、コーヒー、マシュマロ。

店名がVallmo(ケシ)なのですから、ケシの実を食べずに帰るわけにはいきません。ケシの実、プラム、溶かしバターを合わせたじゃがいもの団子「シュクバーネク」のアレンジは、ここで完成の域に達しています。シンプルな組み合わせなのに味わいは圧倒的で、満ち足りた気持ちになると同時に、すぐにでも次の予約を入れたくなります。

レストランVallmoのデザート。じゃがいものシュクバーネク、ケシの実、プラム。
レストランVallmoのデザート。じゃがいものシュクバーネク、ケシの実、プラム。

Vallmoのワインペアリングは、きっちり決まっているわけではありません。ソムリエがその時のメニューとお客さんの好みに合わせて柔軟に組み立て、チェコのワインと外国のワインを組み合わせることもためらいません。

たとえば、ドイツのワイナリー、シュタインタール(Steintal)のシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)。軽めでミネラル感のある赤ワインで、ダン・クカチカの肉料理に意外なほどよく合います。

レストランVallmoのワインペアリング。ドイツのワイナリー、シュタインタールの「Buntsandstein Spätburgunder」(2021年)。
レストランVallmoのワインペアリング。ドイツのワイナリー、シュタインタールの「Buntsandstein Spätburgunder」(2021年)。

とはいえ、ワインリストの主役はモラヴィアです。繊細な料理には、たとえばペトル・コチャジーク(Petr Kočařík)のヒベルナルをスタッフが選んでくれます。

レストランVallmoのワインペアリング。モラヴィアのワイナリー、ペトル・コチャジークの「Hibernal」(2022年)。
レストランVallmoのワインペアリング。モラヴィアのワイナリー、ペトル・コチャジークの「Hibernal」(2022年)。

デザートに甘い締めくくりを添えるのは、オルドジフ・ドラーパル(Oldřich Drápal)のストローワイン(藁の上で陰干ししたブドウから造る甘口ワイン)です。スーヴィニエ・グリ種のこのボトルでは、ワインが瓶の中で自然にもう一度発酵していました。ワインを台無しにしかねない現象ですが、今回はまったく逆の結果に。甘さに繊細な泡が加わって味わいが軽やかになり、ディナーを心地よく締めくくってくれました。

レストランVallmoのワインペアリング。モラヴィアのワイナリー、オルドジフ・ドラーパルのストローワイン「Souvignier Gris」(2021年)。
レストランVallmoのワインペアリング。モラヴィアのワイナリー、オルドジフ・ドラーパルのストローワイン「Souvignier Gris」(2021年)。

夜の締めくくりにワインだけでは物足りないなら、Vallmoには上質なフルーツブランデーもそろっています。食後酒として用意されているのは、職人気質の蒸留所ラドリーク(Radlík)の洋梨のブランデー。ラドリークは、クリアな味わいと濃厚なフルーツの風味で毎年のように賞を受けている蒸留所です。

レストランVallmo。ラドリーク蒸留所の洋梨のブランデー。
レストランVallmo。ラドリーク蒸留所の洋梨のブランデー。

店内の空間にも触れておきたいと思います。インテリアは、まさにふたりきりのロマンチックなデートにぴったりな雰囲気に仕上がっています。まぶしい蛍光灯はなく、落ち着いた明かりやランプがたくさん灯り、親密な空気をつくり出しています。座り心地のいいソファとゆったりしたテーブルの間隔のおかげでプライバシーも快適さも十分で、つい時間を忘れて何時間も過ごしてしまいそうです。

Vallmoは気取ったところのない、好感の持てるお店です。多くのレストランが複雑なコンセプトで目を引こうとするなか、ここは上質な素材と誠実な料理で勝負しています。ダン・クカチカは、チェコ料理もモダンで軽やかなものになりうることを示しています。

Vallmoの8品のテイスティングメニューは2,650コルナ(約20,500円)、5品のショートメニューは1,990コルナ(約15,500円)です。メニューにはビールまたはワインのペアリングを追加できます。

観光ルートから外れた落ち着いた環境で質の高い料理を楽しみたいなら、プラハのナープラフカ河岸のすぐそばにあるVallmoは間違いのない選択です。

ぜひ味わってみてください!

Vallmo

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ダン・シュパニヘル

ダン・シュパニヘル

僕はダン。屋台の一皿からミシュランの星まで、自分の舌で確かめたものだけを書いています。おいしいもののために世界の半分を旅して、ありとあらゆるものを - ときには、とんでもないものまで - 試してきました。

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