ナントのおすすめグルメ・レストラン
ナントはフランスで6番目に大きな都市で、ロワール川下流の港町であり、ブルターニュの歴史的な首都でもあります。ただし現在の地域圏の区分では、ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏に属しています。
前回の旅では、ここを食べ歩きの拠点にしました。夜は街でテイスティングメニューを味わい、昼間は近郊へ食の小旅行に出かけました。行き先はゲランドの塩田、海辺の町ル・クロワジック、そしてクリソンにある中世の市場です。

ナントの食文化を形づくった歴史
ナントの料理を生んだのは港です。カリブ海産のサトウキビ糖の精製は1654年に始まり、17世紀末には街で12もの製糖所が稼働していました。砂糖と一緒に、アンティル諸島のラム酒も船で運ばれてきました。ただ、港の富を築いたのは奴隷貿易を含む三角貿易でした。そして、まさにこの植民地の砂糖とラム酒から、ナントの菓子づくりの伝統が生まれたのです。18世紀末から19世紀初めには、すでにロワイヤル広場のアーケードでベルランゴが売られていました。1920年代には、マラコフ地区だけで7軒の菓子店がありました。
もうひとつの原点は船乗りの乾パンです。二度焼きした「ビスキュイ」がなければ、どの船も港を出られませんでした。この伝統を受け継いだのが、1846年にジャン・ロマン・ルフェーヴルとポリーヌ・イザベル・ユティルが開いた菓子店です。息子のルイは1886年にビスケット「プティ・ブール」を生み出し、その2年後にはナントの商事裁判所で「Petit-Beurre-LU-Nantes」の商標を登録しました。展望台を備えたLU工場のアール・ヌーヴォー様式の塔は今も残り、文化施設リュー・ユニック(Le Lieu Unique)になっています。ビスケットのほうは今も焼かれ続けていて、その数は年間およそ10億枚にのぼります。
そして3つ目がブルターニュです。ナントはかつてブルターニュ公の居城があった街で、ブルターニュから切り離されたのは1941年の政令によってでした。1956年にペイ・ド・ラ・ロワール地域圏が誕生すると、ナントはその中心都市になりました。ロワール・アトランティック県をブルターニュに戻すかどうかの議論は今も続いています。でも台所では、街はとっくに自分なりの答えを出しています。そば粉のガレットを出すクレープリーが、街角のあちこちにあるのです。

ナントから出かける食の小旅行
ナントは、郊外へ食べに出かける拠点としても便利です。僕は3か所を回りました。手摘みの海塩で知られるゲランドへはBlaBlaCarで向かい、そこからは一日歩いて過ごしました。午前中は中世の城壁を見て、次に塩職人の協同組合のビジターセンターを訪ね、最後は塩田のあいだを5キロ歩きました。ところどころで、パリュディエ(塩職人)が長い熊手を手に腰をかがめていました。
塩田からは、漁師町ル・クロワジックへ足を延ばしました。ここで立ち寄りたいのがCrêperie Tante Germaineです。1952年から続くクレープリーで、ガレットを客の目の前で焼いてくれます。僕が頼んだのは、そば粉のガレットとシードル。ガレットは「La Penn Sardine」で、イワシのリエット、レモン、サリコルヌ(シーアスパラガス)がのっていました。
3つ目の小旅行がいちばん手軽です。ナントからクリソンへは直通列車が1日15本ほど出ていて、所要時間は15分ほど。お目当ては1376年から1377年にかけて建てられた木造の市場レ・アールで、その小屋組みの下では600年以上にわたって途切れることなく市場が開かれてきました。火曜日はこぢんまりとしていますが、金曜日には周りの通りに100ほどの店が並びます。街の向こうの丘にはブドウ畑が広がっています。クリソンは、ミュスカデのラベルに自らの名前を記すことが認められた町のひとつなのです。


ナントで絶対食べたいもの
- ガトー・ナンテ。ラム酒をたっぷり染み込ませたアーモンドケーキに、白いアイシングをかけたお菓子です。19世紀にここナントで、植民地の砂糖とアンティル諸島のラム酒から生まれました。1882年から1972年までは、地元のLU工場でも半ば工業的に焼かれていました。
- プティ・ブール(LU)。フランスでいちばん有名なビスケットは、ナント生まれです。ルイ・ルフェーヴル・ユティルが1886年に考案し、ナントの商事裁判所で商標を登録しました。四つの角とギザギザの縁が特徴で、今も年間およそ10億枚が焼かれています。
- ミュスカデ。ナント近郊の辛口白ワインです。「ヴィニョーブル・ナンテ(vignoble nantais)」と呼ばれるブドウ畑は、街のすぐ外から始まります。ブドウ品種はムロン・ド・ブルゴーニュで、この品種からつくられるワインは世界でもミュスカデだけ。ナントの人たちが大好きなムール貝や牡蠣に合わせるのが定番です。
- ブール・ブラン。魚料理に添えるバターソースで、ロワール川を数キロさかのぼったサン・ジュリアン・ド・コンセルで生まれました。言い伝えによると、料理人クレマンス・ルフーヴルが、カワカマスに添えるベアルネーズソースにエストラゴンと卵黄を入れ忘れ、偶然できあがったのだそうです。
- ベルランゴ・ナンテ。煮詰めた砂糖でつくる四面体の硬いキャンディーで、ナントでは19世紀からつくられています。1907年には、マラコフの河岸に専用の工場ができました。円錐形の紙袋に入れて売られ、LUの塔と同じくらいナントを象徴する存在です。
- リゴレット・ナンテーズ。ベルランゴの繊細な妹分といったところで、カリッとした砂糖の殻の中にフルーツのマーマレードが詰まっています。1902年にナントの菓子職人シャルル・ボユが考案し、自分の飼い猫にちなんで名づけました。アール・ヌーヴォー様式のモザイクで飾られたマルヌ通りの本店は、今も営業しています。
- キュレ・ナンテ。ウォッシュタイプのやわらかいチーズで、1880年にピエール・イヴェールがサン・ジュリアン・ド・コンセルで生み出しました。地元の司祭の助言を受けて、「ナントの司祭」と名づけたそうです。現在は、近くの港町ポルニックでつくられています。
- マーシュ・ナンテーズ。1999年に地理的表示保護(IGP)を取得したマーシュ(ノヂシャ)で、ロワール川沿いの砂地で育てられます。旬は9月から3月です。
- ガレットとクレープ。そば粉のガレットも甘いクレープもブルターニュ全体の伝統で、ナントが発祥というわけではありません。とはいえ、ブルターニュの歴史的な首都であるナントには、これを自分たちの味だと言う資格が十分にあります。実際、中心街はクレープリーだらけです。
- … ほかにも何十ものフランス料理をフランスで絶対食べたいもので紹介しています。
ナントのおすすめグルメ・レストラン
- Sources。ヴェルダン通りにあるビストロで、夜の5皿のテイスティングメニューはシェフのおまかせです。ナチュラルワインと、地元の漁師や農家から直接仕入れた食材が主役。Sourcesでのディナーは、今でも僕の最高の食体験のひとつに数えています。出てきたのは、ブルターニュ産の牡蠣とディルのグラニテ、そば粉とムール貝にカニのジュ、子羊とグリーンピース。締めくくりはスモークしたチョコレートでした。
- Roza。モネ広場にある、シェフのジャン・フランソワ・パンタレオンのレストランで、ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏の食材を軸にしています。僕が訪れた当時はミシュランの星を持っていましたが、2023年にシェフ自らがガイドに星の返上を申し出て、2026年版では星なしで掲載されています。僕は5皿のテイスティングメニューを、ワインペアリングつきでいただきました。
- Pickles。イギリス出身のシェフ、ドミニク・クァークのビストロです。地元のオーガニック農家の食材を使った、アジアの要素を取り入れたモダンな料理で、メニューは3週間ごとに替わります。ゴ・エ・ミヨ(Gault&Millau)2026年版では2トックを獲得しています。3皿のランチメニューでは、オマールのタルタルや豚ヒレ肉が出てきました。


街にとどまるにしても、僕のように近郊まで食べに出かけるにしても、ナントでお腹をすかせることはまずありません。
ナントのグルメを満喫してください!